当院では、経口的・経鼻的上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)及び、経肛門的下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)を施行しております。
病院受診後、可能な限り早く内視鏡検査を施行させていただきます。患者様の症状や全身状態に合わせて検査予約を致します。消化管の出血など緊急に内視鏡検査が必要な場合には受診日当日に検査を行うこともあります。
内視鏡に伴う苦痛をできるだけ和らげる検査・治療を目指しております。胃カメラ・大腸カメラの検査を受けることに不安がある方は、鎮静剤を用いてウトウトした状態で検査を行うことができますので診察時にご希望をお聞かせください。もちろん、鎮静剤を使用しない検査も行うことができます。
病気の早期発見・早期治療を行います。良性疾患・悪性疾患問わず、いかなる病気であっても、早期に発見して的確な治療を致します。
専門的な内視鏡治療も施行しております。当院ではスクリーニング検査(病気の有無を調べる検査)だけではなく、色々な内視鏡治療を施行しております。消化器内科医師・消化器外科医師が協力して検査・治療しておりますので内科→外科、外科→内科への受け渡しをスムーズにすることで、患者様に必要な治療を可能な限り早く行います。
胸やけ / 食欲低下 / 心窩部痛(みぞおちの痛み) / 腹痛 / 黒色便(海苔の佃煮のような色) / 貧血症の方 / バリウム検査で異常が見つかった方 / ピロリ菌の検査で異常が見つかった方 等
便秘 / 下痢 / 腹痛 / 血便 / 便が細い方 / 便潜血検査が陽性であった方 等
以上のような症状のある方は当院胃腸科外来を受診して頂き、担当医に相談してください。
従来の内視鏡検査では、胃や腸を膨らませるために検査中に空気を入れておりましたが、当院では炭酸ガスを使用する事でお腹の張りを軽減し、より負担の少ない検査に努めています。
従来の大腸内視鏡検査や長時間を要する内視鏡治療では、腸管内に入れた空気の影響で「お腹の張り」 「不快感」を伴っておりました。この事が、「内視鏡検査は辛い」というイメージにつながっていました。
しかし、炭酸ガスは空気に比べて速やかに吸収される(空気のおよそ200倍の速さ)特性があります。
炭酸ガスを使用する事により検査後、腸管の中の炭酸ガスが次第に吸収されるため、苦痛(おなかの張り)を大幅に軽減することができます。
EMR 内視鏡的粘膜切除術 |
内視鏡を使って粘膜を切りとる手技であり、消化管の腫瘍性病変の治療です。 詳しくは胃癌の項をご参照ください。 |
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内視鏡的ポリープ切除術 | 良性腫瘍を含めた隆起性病変を切除する治療です。 |
ESD 内視鏡的粘膜下層剥離術 |
高周波メスを使って、粘膜下層の深さで病変を剥ぎ取る手技で、消化管の腫瘍性病変の治療です。 詳しくは胃癌の項をご参照ください。 |
ERCP 内視鏡的逆行性膵胆管造影 |
胆のう・胆管あるいは膵臓の病気を診断するために内視鏡を用いた検査です。 詳しくは胃癌の項をご参照ください。 |
EST 内視鏡的乳頭切開術 |
胆汁が十二指腸に流れ出る出口を、内視鏡で見ながら電気メスで切り拡げる治療法です。 |
EVL 内視鏡的静脈瘤結紮術 |
肝硬変などに患っている患者様の中に食道に血管のコブができることがあります。それを食道静脈瘤といいます。放置すると破裂の危険性があるので、静脈瘤自体を小さな医療用の輪ゴムで止めることにより静脈瘤の血流を遮断する治療法です。 |
PEG造設術 内視鏡的胃瘻造設術 |
食事摂取が困難な患者様に対して、栄養を胃から投与するためのチューブを作る治療法です。 |
内視鏡的止血術 | 内視鏡による止血には熱凝固による方法・クリップによる方法・薬剤による方法と大きく3つの方法に分けられます。出血量や出血部位などにより最適な方法を選択して止血する治療です。 |
内視鏡的異物除去術 | 食物が食道につまった時や、PTPシート(薬のシート)・入れ歯・金属片を誤飲してしまった時、アニサキス(サバやイカにいる寄生虫)を除去する場合に行う治療です。内視鏡で確認し、鉗子やフードを使って回収する治療法です。 |
内視鏡的バルーン拡張術 | 内視鏡を使って挿入したバルーンカテーテルを膨らませることにより、狭くなっている部位を拡張する治療法です。 |
内視鏡的ステント留置術 | 短いチューブを各狭窄部位に置いて来る治療法です。プラスチック製のステントや網状の金属製のステントがあります。根本的な原因を取り除けない時や、治療までに時間がかかる場合に使われます。 |
内視鏡的止血術 | 内視鏡による止血には熱凝固による方法・クリップによる方法・薬剤による方法と大きく3つの方法に分けられます。出血量や出血部位などにより最適な方法を選択して止血する治療です。 |
VE 内視鏡的嚥下機能検査 | 高周波メスを使って、粘膜下層の深さで病変を剥ぎ取る手技で、消化管の腫瘍性病変の治療です。 詳しくは胃癌の項をご参照ください。 |
黒色便を主訴に来院された患者様です。採血で貧血は認められませんでしたが、上部消化管出血が強く疑われるため、来院当日に上部内視鏡検査を行いました。 胃の入り口に近いところに出血源認められたため、クリップで止血しております。止血術を施行したため、治療後にそのまま緊急入院し、1週間弱で無事に退院となりました。入院中の検査でヘリコバクター・ピロリ菌が陽性であったため、退院後に外来でピロリ菌の除菌療法を行いました。
本来、血液は真っ赤ですが胃酸により化学変化を受けると血液は黒く変化します。そのため、黒色便を認めた場合には、食道・胃・十二指腸など上部消化管からの出血を疑います。ちなみに血便の場合は、胃酸の影響を受けない大腸(下部消化管)からの出血を疑います。
胃がんとはその名の通り、胃の粘膜にできた悪性腫瘍のことを言います。胃がんは日本人に最も多いがんの1つで、50歳~70歳の男性に多く見られます。現在は減少傾向にあると言われていますが、大腸がん・肺がんに次いで3番目に多いがんとなっています。ただし、医療が発展しているおかげか死亡数は罹患数(胃がんと診断された方)の半分以下になっています。この結果からも早期発見することで、適切な治療に進むことができていると考えられます。
胃がんは大きく分けて「早期胃がん」と「進行胃がん」の二つに分けられます。胃の壁は内側から、粘膜・粘膜筋板・粘膜下層・筋層・漿膜(しょうまく)層の順に層を形成しています。がんの浸潤が粘膜下層までに留まっているものを早期胃がんと言い、95%以上で転移がないといわれています。
リンパ節転移のない早期胃がんでは、胃の表層を切除する内視鏡手術で根治効果が得られることがわかってきており、従来の外科手術と比べ体への負担がより小さい治療として注目されています。最近では病変が浅く、リンパ節に転移している可能性が極めて小さいと考えられる早期胃がんには内視鏡手術が行われます。胃がん治療ガイドラインではその適応はリンパ節転移の可能性がほとんどなく、腫瘍が一括切除できる大きさと部位にあることとされております。
具体的にはサイズが2cm以内で、がんが粘膜内に留まっていると考えられ、病理組織が“分化型”といわれるがんで潰瘍を伴っていない腫瘍とされています。最近では更にサイズの大きながんにも適応拡大病変として同様の治療が行われています。“手術„といえばお腹をガバーっと開腹しなければならないといったイメージがあるかもしれませんが、内視鏡手術の場合開腹する必要はありません。口から内視鏡を入れて内視鏡を通した器具を用いて手術を行います。そのため術後に体に傷跡が残るといったことはありません。また麻酔もするので痛みもありません。内視鏡手術の後に詳しく検査(顕微鏡での検査:病理検査)をしてがんが取りきれていれば手術の成功となります。
実際の方法としては
EMR(Endoscopic Mucosal Resection):高周波スネアを用いる方法
ESD(Endoscopic Submucosal Dissection):高周波メスを用いる方法
の2つの方法があります。
内視鏡的粘膜切除術(Endoscopic mucosal resection:EMR)は内視鏡を用いて筋層以下(粘膜下層の奥)に障害を与えずに、粘膜下層の深さで粘膜層を広く切除し、組織を回収する技術です。内視鏡の役割は患者さんのQOLの向上につながる低侵襲(ていしんしゅう)治療の実現のため、「広範囲の早期がんをより適確に、完全に、一括切除する」ことをめざしたEMRは、早期のがんに対し、従来の外科的治療に代わる新しい治療法として脚光をあびています。
EMRは開腹手術に比べ、患者さんの身体の負担が軽いため、今後も多いに期待される手技です。同時にEMRの技術(器具や道具の開発)も改良・応用され、様々な病変の検査、処置・治療に、幅広く利用されていくことと考えられます。
がんの下に生理食塩水などを注入して癌全体を隆起させてからループ状のワイヤーをかけて、ワイヤーをしぼって高周波電流を流してがんを焼き切ります。
早期がんに対して行われている内視鏡治療は、開腹手術に比べて入院日数が短期間ですみ、また患者さんへの負担も軽くできるため、従来の外科治療に代わる新しい治療法として注目されています。
内視鏡を使った治療法には、スネアと呼ばれる金属の輪を病変部に引っ掛け、高周波電流を流して切り取る方法(内視鏡的粘膜切除術;Endoscopic mucosal resection:EMR)や、最近では、専用の処置具を使ってより大きな病変を切り取る方法も行われるようになってきています。これは内視鏡的粘膜下層剥離(はくり)術(Endoscopic submucosal dissection: ESD)と呼ばれています。
EMRは、治療が比較的短時間ですみますが、一度に切り取ることができる病変が、スネアの大きさ(約2cm)までと制限があるのに対し、ESDでは専用の処置具を使い、より広範囲に病変を切り取ることが可能な治療法です。
切り取られた病変は、最終的に顕微鏡でその組織の様子が確認されます(病理検査)。
このように、ESDでは大きな病変もひとかたまりで取れ、また病理検査でのより正確な診断にも役立つと考えられています。
EMRでは切除が困難な部位やサイズの大きな腫瘍などに行います。ESDでは、まずがんの外側にマーキングをして、マークより大きく病変を剥離するようにします。次に粘膜下層にヒアルロン酸を注射して病変全体を浮かして、安全に剥離できるように致します。がん周囲の粘膜を切開し、粘膜下層を直接観察しながら、少しずつ高周波メスで剥離して切除します。利点としては、サイズの大きい腫瘍や潰瘍瘢痕(体の傷跡と同じように粘膜が少し硬くなってしまうこと)を伴う例などでも一括切除できる点です。一方でEMRに比べ熟練した手技が必要で治療時間がやや長くなります。
粘膜を剥ぎ取る治療であるため、腫瘍を切除した場所は人工的に潰瘍を作ったことになります。治療中あるいは治療後およそ1週間は出血が起こる可能性があります。その場合は内視鏡を使って出血を止める処置をします(輸血を要する頻度は3~4%といわれています)。
治療中あるいは治療後数日して、胃に穴が開いてしまうことがあります(1~5%といわれています)。多くの場合は内視鏡を使って縫い合わせる治療で対応可能ですが、穴が大きい場合は腹膜炎などを生じ、外科手術を要することもあります。
治療の際に鎮静剤・鎮痛剤・のどの麻酔薬などを使用します。まれにショック・不整脈・呼吸困難・蕁麻疹などが起きる場合があります。その場合は症状に応じての対応が必要になります。 消化器内視鏡学会偶発症対策委員会による全国調査では、きわめて稀ですが内視鏡検査治療に伴い死に至る重篤な偶発症も報告されています。しかしながら治療の必要性を鑑み、万全の注意を払って治療を行います。
胃がんの内視鏡手術は、転移のない早期がんを対象としますが、術前にがんが粘膜内に留まっているかどうかは内視鏡観察でかなり正確に判断できるものの、転移(特にリンパ節)の有無を確実に診断する検査法はありません。現状では手術例をもとに、大きさ・形(癌巣内潰瘍(ul)有無も含む)・深達度(がんの深さ)・組織型(がん細胞の種類)の組み合わせより経験的に転移の可能性を類推して行います。最終的には切除標本の厳密な病理組織検査で治療の根治性を判断しますので、正確な診断のためには腫瘍を一括切除すること(一塊にして切除すること)が重要とされています。がんが取りきれていれば治療は終了となりますが、がんが粘膜を超えて広がっていて、リンパ節転移の可能性が疑われれば内視鏡治療後に外科的切除の追加が必要な場合があります。
食生活や生活習慣の欧米化により、日本人の大腸がんが増加しています。先の2015年国立がんセンターがん対策情報センター(人口動態統計)のグラフを見て頂くと、大腸がんは罹患数(患者数)が最も多くなっております。既に、2cm以下という小さな早期大腸がんは内視鏡で治療することが可能ですが、新しい技術により、これまで内視鏡治療が困難とされていた2cmを超える表面型(平坦な病変)のがんであっても、内視鏡で治療できるようになってきました。
2009年6月、厚生労働省は「内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD:Endoscopic Submucosal Dissection)」を大腸がんに対する先進医療として承認しました。ESDとは、①胃がんの項で記載されている通り、内視鏡の先端から特殊なメスを出してがんの周囲の粘膜を切り開き、がんをはがし取る治療法のことです。ESDは2006年4月に早期胃がんを対象と治療法が、2008年4月には早期食道がんを対象とする治療法が保険適用となっています。しかし、大腸は胃や食道に比べて腸管の壁が薄く、技術的な難易度が高いことなどを理由に保険適用になっていませんでした。大腸がんに対するESDが先進医療として認められたことで、ESD自体の医療費は自己負担ではありますが、検査などは保険診療で受けられるようになったのです。
実はESDという治療法を使わずとも、病変のサイズが2cm以下の早期食道がん、早期大腸がんは、内視鏡による治療法が既に普及しています(胃がんはほとんどがESDで治療されています)。これは同じ内視鏡による治療でも、内視鏡的粘膜切除術(EMR:Endoscopic Mucosal Resection)と呼ばれ、がん組織が粘膜内に留まり、病変のサイズが2cm以下の場合に適応されます。
粘膜に発生した病変がくびれていたり、茎を持ったものであれば、そのくびれや茎にワイヤーを引っ掛けて切除するポリペクトミーという方法で切除可能であり、平坦なものや陥没しているものは、生理食塩液などの液体を粘膜下層に注入し、浮き上がった病変を金属の輪に引っかけて切除するEMRが適用されます。しかし、これらの方法では、大きな病変は一度に切除できず、周辺にがんが残り再発しやすいという問題がありました。
このEMRの弱点を克服したのがESDです。ESDは、治療前に拡大内視鏡などを用いた詳細な内視鏡診断にて、病変が粘膜下層浅層より深く達していないことを確認したうえで施行することが重要です。病変部の粘膜下層に専用の液体(ヒアルロン酸)を注入して病変を浮かせ、その周囲の粘膜を切開します。その後、粘膜下層を筋層からはぎ取るように、高周波ナイフ(特殊な電気ナイフ)を用いて病変の周囲を剥離して一括切除します。ただ、ESDの対象は病変が粘膜層にとどまっている早期がんです。リンパ節は切除できないため、リンパ節転移が疑われる場合は内視鏡治療の適応とはなりません。
このESDという方法によって、EMRでは一括切除できなかった大きな病変を取り残しなく切除することが可能となりました。また、がんが一塊で取り出せるため、がん組織の取り残しのリスクも低くなりました。加えて、がんの深さ(深達度)や血管・リンパ管への浸潤を術後の病理診断で正確に行うことが可能です。
EMRに比べてメリットの多いESDですが、EMRよりも大きく組織を切除するため、出血や穿孔のリスクがあり、我々医師の手腕が問われる治療法です。特に大腸は、腸管の壁が薄いために穿孔のリスクは胃よりもさらに高くなりますし、もともと内視鏡の操作自体が胃より難しいのです。
聞きなれない検査・治療だと思いますが、少し特殊な内視鏡検査及び治療になります。適応となる代表的な病名としては、総胆管結石・慢性膵炎・胆管癌・膵癌・胆石性膵炎など様々な疾患があります。 内視鏡を使って胆管・膵管を造影する検査をERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)といいます。口から十二指腸まで内視鏡(側視鏡と言ってカメラがスコープの真横に近いところについている特殊な内視鏡)を入れ、その先端から膵管・胆管の中にカテーテル(細い管)を挿入します。カテーテルから造影剤を入れて、膵管や胆管の中を造影剤で満たしてレントゲン写真をとります。同時にまた、膵液や胆汁を採取したり、病変部から組織や細胞を採取するような検査を行うこともあります。
一番下の2枚の写真はERCPしながらレントゲン写真を撮影したものです。造影剤を入れて総胆管を白く染めています。左側は結石除去前の写真で総胆管内にある石により造影剤で染まっていない黒い部分があります。ここに石があるのです。右側は結石除去後です。総胆管の上から風船を膨らませて総胆管を染めました。総胆管が全て造影剤で満たされていて石は残っていません。治療終了です。